大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
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対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2024年1月活動報告

 2024年1月11日(木)、Youtubeにて2023年度第9回(全体では第17回)放送を
実施しました。本番組のメインパーソナリティーである「のじにぃ」(野尻英一先
生)と「ともちゃん」の二人に加えて、ゲストとして、フリーランスの翻訳者として
ご活躍されていた「きそべ」さんにご出演いただきました。
 きそべさんのお話しから、哲学書をよむ、哲学をするということが、ただ単に知識
を得るということではなく、人生を振り返ることでもあるということを考えさせられ
たように思います。
 以下は、出演者のみなさまからいただいたご感想です。


【1月ゲスト・きそべ】
今までこういう形で自分のテツガクとの関わりを振り返ることはなかったので、自分
でも思いがけない気づきや発見もあり、とても貴重な経験になりました。これを励み
にまた勉強を続けていきたいと思います。拙い話を聴いてくださってほんとうにあり
がとうございました。


【のじにぃ】
ハイデガー『存在と時間』との接触で、生きる意味とは何か考えることができたとい
うきそべさんの語り、深く沁み込みました。目標を持たない、という言葉にもハッと
させられました。じぶんはまだまだその境地に到達していない。が、目標を持たなく
なるという目標ができました。感謝です。
本年度の放送は今回で終わりです。ご視聴くださったみなさま、ありがとうございま
した。


報告:眞田航(哲学と質的研究)

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2023年12月活動報告

 2023年12月7日(木)、Youtubeにて2023年度第8回(全体では第16回)放送を
実施しました。本番組のメインパーソナリティーである「のじにぃ」(野尻英一先
生)と「ともちゃん」の二人に加えて、ゲストとして、リタイア後に積読状態だった
本をじっくり読まれている「いっこう」さんにご出演いただきました。
 数十年間にわたってコツコツと読書ノートをまとめられているというお話が印象的
でした。一般の方々から研究者まで、哲学書を読むすべての読書家にとって、見習う
べき姿勢を示していただけたように思います。
 以下は、出演者のみなさまからいただいたご感想です。


【2023年12月ゲスト・いっこう】
事前に哲学の学び・読書生活に関し大学・社会人時代についてターニングポイントを
整理しました。当日は的確な質問と示唆的なコメントによって自分の経験・思いを率
直に話すことができました。これまでの学び・読書生活の棚卸ができ貴重な機会でし
た。感謝です。


【のじにぃ】数十年にわたって記録し続けた読書ノート。ごく簡単なものでも痕跡を
残すことが大事とのお話でした。これはあらゆることに通じるかも知れません。一日
一字を記さば一年にして三百六十字を得、という吉田松陰の言葉がありますが、本当
に実行した人を見た思いがしました。感動です。
報告:眞田航(哲学と質的研究)

人類学基礎勉強会 12月活動報告

文責:松木貴弥(共生学系・共生の人間学)

活動日:12月6日、13日

 引き続き、クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』(1962)の読書会を行いました。第一章「具体の科学」の終盤部においてレヴィ=ストロースが分類している美術(「西洋の造形美術」・「いわゆる未開美術ないし原始美術」・「応用美術(工芸)」)やその創作の過程について、具体例を用いつつ参加者間で議論し、内容の理解を深めました。
 20日は都合により活動を行わなかったため、「具体の科学」が数ページ残っています。1月は、「具体の科学」を読み終えたのち、人類学の基礎知識を学ぶテクストを読み進めつつ、哲学の文脈において人類学がどのように受容されてきたのかについても検討していきます。

「ラカンと現代社会」研究会 12月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:12月6、13、20日
12月の研究会では、ラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅵ講を読み始めました。ラカンは主体を分裂したものとして考えていますが、主体が分裂するとは具体的にどのようなことなのかを巡って、参加者間で議論しました。今月で第1節が読み終わったので、来月からは第2節に入ります。
また研究発表を2件おこないました。1つ目は日本におけるボーイズラブ作品の読者による受容状況を、精神分析批評理論を用いて分析するものでした。2つ目は日本の「おたく」文化論における精神分析理論の受容を検討するものでした。いずれも精神分析と文化研究を結びつけるような発表でした。
1月も引き続き『精神分析の四基本概念』を読み進めます。

マイクロアグレッション関連文献読書会 12月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:12月19日
今月は、これまで続けてきたデラルド・ウィン・スーの著作『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』の読書会の最終回として、参加者それぞれが用意したコメントをもとに、議論をおこないました。
特に議論で中心的な論点となったのは、「マイクロアグレッションをどの立場から語るか」という問題です。スーは臨床心理学者という立場のもと、主にクライエント(=被害者)の立場からマイクロアグレッションを論じていますが、それは十分なのか。特権をもつ者(=加害者)の立場からマイクロアグレッションを論じることや、あるいはスーとは違うかたちでマイクロアグレッションの被害者の立場から語ることも可能なのではないか、ということを議論しました。この問題は「立場」や「代理」という難しい問題を含んでおり、参加者間でも完全な結論に至ることはできませんでしたが、この研究会における問題の所在を参加者間で改めて共有するという観点から言えば、充実した議論ができたのではないかと思います。
図書の選定以前に想定していたことではないのですが、本読書会で来年以降に読み進めるロビン・ディアンジェロの『ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?』(日本語訳は明石書店)は、偶然にも、まさにそのような特権の問題を扱った著作です。スーの著作やこれまでの議論の成果を踏まえつつ、更に問題の理解や議論を深めていければと思います。

岩田慶治:「京都学派およびポスト京都学派」という文脈において

文責:織田和明
活動日:2023年12月9日(オンライン開催)
イベント参加人数:17名

 関西大学などで非常勤講師を務められている西垣有先生をお招きして「岩田慶治:「京都学派およびポスト京都学派」という文脈において」をオンラインで開催しました。大阪大学グローバル日本学教育研究拠点・拠点形成プロジェクト 「京都学派およびポスト京都学派における科学哲学および技術哲学研究」の主催、大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクト「哲学の実験オープンラボ」の共催です。人類学・哲学に関心のある人を中心に17名の方にご参加いただきました。
 岩田慶治(1922-2013)は大阪市立大学、東京工業大学、国立民族学博物館、大谷大学で教授を務めた文化人類学者で、東南アジアでのフィールド調査、そして日本文化への独自の視点から分析を経て、〈自分学〉として成された新アニミズム論というユニークな理論を構築したことで知られています。西垣先生は2022年に京都大学学術出版会から出版された松本 博之・関根 康正編『岩田慶治を読む: 今こそ〈自分学〉への道を』の「第4章 今日の岩田慶治──柄と地をめぐって」を執筆されています。
 この研究会では西垣先生に「岩田慶治:京都学派とポスト京都学派という文脈において」というタイトルでご発表いただき、「一と多」「直接無媒介と媒介」「〈同時〉と入れ子構造」「キラキラと構想力」をキーワードとした大変興味深い議論をお聞きし、そしてみなさんと岩田の思想についてディスカッションをすることができました。
 西垣先生は、岩田の思想を、西田幾多郎や西谷啓治を中心とした京都学派や同時代に新京都学派の一人とも呼ばれた今西錦司、主に戦前に活躍したアメリカの文化人類学者のルース・ベネディクトや現代ブラジルの文化人類学者ヴィヴェイロス・デ・カストロの思想と対比しながら論じていきました。そして岩田の思想の特徴を、親鸞や道元といった日本の仏教思想を踏まえながら一と多が〈同時〉に、入れ子構造で直接無媒介に現れる「個物と全体がそこでキラキラとかがやいて互いに相侵すことがない」世界を描くものであると明らかにされました。
 参加者の方からは「岩田のことは知らなかったけれど、京都学派・ポスト京都学派と関連付けながら学ぶことができて、広がりを感じました」や「近年リバイバルが進みつつある岩田の人類学を、京都学派および現代人類学との関連で整理したもので、たいへん勉強になった」といった感想をいただいています。西垣先生のご講演、そして参加者とのディスカッションを通じて岩田の思想の持つ大きな可能性が示されました。哲学と人類学の交流によって新たな思想を描き出す可能性が私たちの前には広がっています。

主催:大阪大学グローバル日本学教育研究拠点・拠点形成プロジェクト 「京都学派およびポスト京都学派における科学哲学および技術哲学研究」 

共催:大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター IMPACTオープンプロジェクト 哲学の実験オープンラボ

講演:
西垣 有(関西大学非常勤講師)

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2023年11月活動報告

2023年11月16日(木)、Youtubeにて2023年度第7回(全体では第15回)放送を
実施しました。本番組のメインパーソナリティーである「のじにぃ」(野尻英一先
生)と「ともちゃん」の二人に加えて、PDの「めとろ」さん、現役大学院生の「きゃ
くの」さん、「はーりー」さん、「ピーちゃん」さんに、ご出演いただきました。
今回放送は、「哲学勉強スペシャル」回ということで、哲学研究をおこなっている
若手のみなさんに、「哲学の勉強のやりかた」をテーマにお話しいただきました。哲
学書の文面を写経のように写しながら解釈したり、みんなで集まって読書会をおこ
なったり、哲学研究の業界にいなければなじみのないような勉強のやりかたについて、
情報提供することができたと思います。
以下は、出演者のみなさまからいただいたご感想です。


【11月ゲスト・めとろ】
多くの人は、パソコンをもっていても、その作り方は知りません。他方で研究者も、
他人の本や論文を読んでいたとしても、それが生み出されるまでの「勉強の仕方」は
意外と知りません。この過程を、きちんと伝えていくのが大事かもしれないと、今回
の企画を通じて思いました。


【11月ゲスト・ハーリー】
今回、他分野の方々とお話できたので有意義な経験となりました。私は分析哲学の立
場としてお話しましたが、特に大陸系の方々の勉強法をお聞きした時にみなさんが
揃って本を「読む」と仰っていたのが印象的でした。


【11月ゲスト・きゃくの】
自分が日々やっていることを改めて言語化して他のひとと共有する、という経験がで
きて楽しかったです。「いつか分かるときが来たらいいなあ」と思いながらゆるゆる
と本を読む日々を、大切にしたいと思います。


【11月ゲスト・ピーちゃん】
哲学書を読むということは、一見すると孤独な作業に見えますが、ほかのひとたちと
一緒に読んだり、自分がこれまで経験してきた人間関係を思い出したりしながら読ん
だりすることでもあり、たくさんの他者を媒介した活動なのだなと、再確認しました。


【のじにぃ】
哲学でも領域によって勉強の仕方にちがいがあり、みなさんのお話、参考になりまし
た。「一万時間の法則」というのがありますが、修行の仕方が異なっても、10年く
らい頑張ると一人前、というところは同じかな、と思いながら聞いていました。がん
ばってください!


報告:眞田航(哲学と質的研究)

人類学基礎勉強会 11月活動報告

文責:松木貴弥(共生学系・共生の人間学)
 活動日:11月1日、8日、15日

先月に引き続き、クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』(1962)の読書会を行いました。11月から第一章「具体の科学」の後半部に入り、有名な「ブリコラージュ(器用仕事)」、「ブリコルール(器用人)」の議論に入りました。ブリコルールの用いる資材集合は資材性(潜在的有用性)をもつものとして集められ、それらはブリコラージュにおける操作媒体であることなど、ブリコラージュの基本的な規定を確認したほか、ブリコラージュと、一般的に考えられる科学や美術との関係についても確認し、内容に即して参加者間で議論を行いました。
12月も引き続き第一章「具体の科学」を読み進めていきますが、第一章を読み終えた後は、人類学に関する知識をより身につけるため、他の入門的なテクストを扱うことも検討しています。

「ラカンと現代社会」研究会 11月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:11月1、15、29日
11月の研究会では、引き続きラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅵ講を読み進めました。ラカンの「テュケー」概念とアリストテレスの「プロアイレシス」概念の関係を議論したほか、フロイトのいわゆる「狼男」症例に対するラカンの解釈を検討しました。
ラカンの議論の思想史的背景を理解したうえでその意義を検討することができたので、良い議論ができたと思います。

マルクス主義的社会理論研究会 9/10月活動報告

丸山由晴(社会学系・比較文明学M2)

活動日:9/5, 9/12, 9/19, 9/26, 10/12, 10/19/ 10/26
8月から引き続き、マルクス『資本論』第1巻に取り組み、第12章「分業とマニュファ
クチュア」第3節から第13章「機械と大工業」第5節まで読みました。
「労働日」章と並んで、「大工業」章は、具体的な労働状況の記述が多く、「経済理論家
マルクス」、「経済原論としての『資本論』」に還元しきれないようにも思われました。
とはいえ理論的な面として、技術とその普及によって、技術進歩があっても古典派が考え
たように労働時間は短縮しないこと、また機械を代表とする 技術 が資本主義においては〈〉
導入コストの問題から十分に展開されないこと、共産主義においては 技術 が更に展開さ〈〉
れること、それに対してデヴィッド・ハーヴェイが指摘するように現存の 技術 には資本〈〉
主義的諸関係が内在している可能性があり共産主義社会ではいかなる 技術 が可能なのか〈〉
ということ、などクリティカルな論点があったと思われます。
11月は休会しましたが、12月から再開予定です