大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
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横田祐美子氏講演会「プレリュード・ノン・ムジュレ――わたしの哲学」

活動日|2月13日

開催場所|大阪大学吹田キャンパスE106教室+Zoom
参加人数|50名(Zoomでの参加者を含む)

内容報告|
2025年2月13日に、横田祐美子氏(横浜美術大学)の講演会をおこなった。本講演会は「ポストヒューマンにおける人間の基礎研究」プロジェクト(2024年度「大阪大学学際融合を推進し社会実装を担う次世代挑戦的研究者育成プロジェクト」共同研究採択)を主催とし、大阪大学未来共創センター附属「哲学の実験オープンラボ」を共催としたイベントである。
 本講演会で横田氏は、ジャン・リュック・ナンシーのデカルト解釈を参照しつつ、固定的ではない「わたし」概念の提案をおこなった。ナンシーはデカルトの論じる「われ」が、デカルトが文章を書くときにのみあらわれることに注目しているが、横田氏はナンシーの議論を受けて、エッセイの執筆や音楽の演奏といった、いわゆる「自己表現」において、そのたびごとに「おばけ」のように存在が不安定な「わたし」が現れると主張した。
講演会後の質疑応答では、主に哲学分野からの質問が相次いだ。たとえば、「わたし」は存在が不安定であるだけに、それを強調することは、ある種の精神病理的な現象においてそうであるように、人間の生存を脅かすことになるのではないかという疑問が示された。これに対して横田氏は、「わたし」は、単にそれ単体で存在するものではなく、むしろある程度固定的な主体を前提としつつも、そこに取り込みきれないものとしてあらわれるものであると応答した。
 ほかにもデリダとナンシーの政治性の違いが横田氏によってコメントされたほか、「わたし」と他者の関係についても議論がなされた。ナンシーのデカルト解釈という、高度に専門的な議論から出発しつつも、都度個人の具体的な経験に差し戻しながら議論を進めることができた。