大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
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「ラカンと現代社会」研究会 2月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:2月14、28日
 2月の研究会では、ラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅵ講の第3節を読み進めました。ラカンの「眼差し」や「しみ」の概念は有名ですが、ラカンがこれらの概念を、狭義の視覚論に留まらず、ナルシシズム批判や哲学批判として展開していることの意義について議論されました。またこの議論がフロイトの『夢解釈』の解釈から展開されていることも改めて確認されました。
 3月も引き続き『精神分析の四基本概念』を読み進めます。

人類学基礎勉強会 2月活動報告

文責:松木貴弥(共生学系・共生の人間学)

活動日:2月14日、21日

 今月前半は、古谷嘉章「私の野蛮人――レヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』調査」太田好信、浜本満編『メイキング文化人類学』世界思想社、2005年、pp. 161-187、出口顕「構造主義の現代的意義」桑山敬己、綾部真雄編著『詳論 文化人類学』ミネルヴァ書房、2018年、pp. 149-164を読みました。『野生の思考』の内容を踏まえ、レヴィ=ストロースの議論について、理解をより深めることができました。

 後半からは、レヴィ=ストロース以前の人類学について学ぶことを目的に、マリノフスキー『未開社会における犯罪と慣習』(1926)を読み始めました。近代社会とは異なる共同体における慣習や、それを遵守する現地の人々のあり方について、内容に即して活発な議論を行うことができました。

 3月も引き続きマリノフスキー『未開社会における犯罪と慣習』を読み進めていきます。

ポスト・トゥルースとアグノトロジー(無知学)

文責:香川祐葵(共生学系・共生の人間学)
活動日:2024年2月10日
イベント参加人数:約10名

大阪大学人間科学研究科棟 東館2階207講義室にて、美馬達哉先生による講演会を開催しました。約1時間程度のご講演の後、会場からの質問を受けての質疑応答が行われました。
美馬先生のご講演では、まず、“無知を構築として捉える視点”にたつ研究領域である「アグノトロジー(無知学)」の概要をご説明いただき、つぎに、そのアグノトロジーの観点から「COVID-19否定論」についてご解説いただきました。さらに、そうした文脈から、“社会的な真実の正誤は、感情に訴えるものかどうかで判定され、主観的な信念と相関する”と考える研究領域である「ポスト・トゥルース」の見方についてもご提言頂きました。

主催:「今日の思想状況としてのポスト・トゥルース研究とその批判的応答」(2023年度大阪大学学際融合を推進し社会実装を担う次世代挑戦的研究者育成プロジェクト共同研究採択)
共催:未来共創センター(哲学の実験OPEN-LAB、Project IMPACT)
講演:美馬達哉(立命館大学 教授)
司会:眞田航(大阪大学 人間科学研究科 博士後期課程3年)

人類学基礎勉強会 1月活動報告

文責:松木貴弥(共生学系・共生の人間学)

活動日:1月10日、17日、24日

10日は、先月に引き続き『野生の思考』の第一章「具体の科学」を読みました。第一章を読み終えたのち、レヴィ=ストロースに関するより基礎的な事項や思想史的背景を概観するため、竹沢尚一郎「構造主義とその超克―レヴィ=ストロースとブルデュー」『人類学的思考の歴史』世界思想社、2007年と檜垣立哉「レヴィ=ストロースの哲学的文脈―構造と自然/自然と歴史」『構造と自然』勁草書房、2022年をとりあげ、事前に内容を読んできた上で、参加者間で議論を行いました。哲学と人類学の双方から、とりわけ「何かを研究し、記述する」ということに関して、活発な議論ができたと思います。

京都学派およびポスト京都学派と科学哲学・技術哲学の現在

 3年にわたって展開してきた大阪大学グローバル日本学教育研究拠点・拠点形成プロジェクト「京都学派およびポスト京都学派における科学哲学および技術哲学研究」の総括シンポジウム「京都学派およびポスト京都学派と科学哲学・技術哲学の現在」を開催いたしました。今回はフランス哲学・ドイツ哲学・日本哲学の分野で活躍する気鋭の中堅・若手研究者に研究発表を行っていただき、日本哲学研究の最前線を更新する充実したシンポジウムとなりました。
 まず本プロジェクト代表者である大阪大学COデザインセンター教授の山崎吾郎先生から、本プロジェクトとシンポジウムの紹介があり、続いて三名の研究者の方から研究発表をしていただきました。
 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程に在学する眞田航さんには「西田哲学とポストモダン:他者の問題をめぐって」のタイトルで研究発表をしていただきました。眞田さんはポストモダン思想の論者である小林敏明、酒井直樹、柄谷行人による西田批判を踏まえて西田の「私と汝」を検討しています。西田は「シュタイ」(=身体的な行為の次元)における「飛躍」的な他者との出会いを論じているものの、それを「神の愛」に基づいた予定調和的な他者との結びつきによって抑圧してしまっていると眞田さんは指摘し、西田における他者の抹消という課題を提出しました。
 京都大学大学院人間・環境学研究科士後期課程に在学する岡田悠汰さんには「ハイデガーから三木清の技術論を読む――現代技術哲学への寄与に向けて」のタイトルで研究発表をしていただきました。岡田さんは三木清の技術論とハイデガーの技術論とを比較し、「三木は因果法則によって理解される「自然」との調和を前提するために技術に積極的なものを見出しているが、ハイデガーは人間の理解を越える「ピュシス」の襲い掛かりを重視するために、技術には消極的な可能性しか見出されない」と指摘します。岡田さんは技術に対して楽観的な三木と悲観的なハイデガーの双方に目を配りながら新しい技術哲学を構想するという課題を提出しました。
 大阪大学大学院人間科学研究科准教授の近藤和敬先生には「三木清の西田の絶対無の解釈から『構想力の論理』の読解へ――三木のスピノザ解釈を手掛かりに」のタイトルで研究発表をしていただきました。近藤先生は三木の初期の論考から『構想力の論理』まで、様々なテキストを読み解きながら三木清の思想の成り立ちを探ります。そして三木によるスピノザ受容を丁寧にたどり、三木がスピノザ哲学の影響のもとで西田哲学を受容しながら三木の歴史的人間学が構想されていることを示していきます。そしてデュルケームなどの集合表象論とマルクスの生産関係論のあいだを射抜くプロジェクトが『構想力の論理』にはあると論じ、それを今後の研究で明らかにしていくと宣言されました。
 総合討議では昨年まで本プロジェクト代表者を務めた専修大学文学部教授の檜垣立哉先生と報告書執筆者である大阪大学大学院情報科学研究科特任助教の織田和明も参加し、参加者とともに京都学派およびポスト京都学派と科学哲学・技術哲学の現在について議論を深めました。今回ご発表いただいたいずれの研究も今後の発展が大きく期待されます。本プロジェクトはここで一度総括となりますが、引き続き研究に取り組み、また新しい形でみなさまとともに研究を深めていく場を持ちたいと考えています。
 今回のシンポジウムは大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクト「哲学の実験オープンラボ」には共催としてご協力いただきました。会場には19名、オンラインでは52名の計71名の方にご参加いただきました。みなさまのご協力に深く感謝申し上げます。

「ラカンと現代社会」研究会 1月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:1月17、24日
 1月の研究会では、ラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅵ講を読み進め、第2節を読み終えました。「反復」から「眼差し」への話題の転換の過程と、ラカンによるモーリス・メルロー=ポンティへの批判的言及を議論しました。
 2月も引き続き『精神分析の四基本概念』を読み進めます。

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2024年1月活動報告

 2024年1月11日(木)、Youtubeにて2023年度第9回(全体では第17回)放送を
実施しました。本番組のメインパーソナリティーである「のじにぃ」(野尻英一先
生)と「ともちゃん」の二人に加えて、ゲストとして、フリーランスの翻訳者として
ご活躍されていた「きそべ」さんにご出演いただきました。
 きそべさんのお話しから、哲学書をよむ、哲学をするということが、ただ単に知識
を得るということではなく、人生を振り返ることでもあるということを考えさせられ
たように思います。
 以下は、出演者のみなさまからいただいたご感想です。


【1月ゲスト・きそべ】
今までこういう形で自分のテツガクとの関わりを振り返ることはなかったので、自分
でも思いがけない気づきや発見もあり、とても貴重な経験になりました。これを励み
にまた勉強を続けていきたいと思います。拙い話を聴いてくださってほんとうにあり
がとうございました。


【のじにぃ】
ハイデガー『存在と時間』との接触で、生きる意味とは何か考えることができたとい
うきそべさんの語り、深く沁み込みました。目標を持たない、という言葉にもハッと
させられました。じぶんはまだまだその境地に到達していない。が、目標を持たなく
なるという目標ができました。感謝です。
本年度の放送は今回で終わりです。ご視聴くださったみなさま、ありがとうございま
した。


報告:眞田航(哲学と質的研究)

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2023年12月活動報告

 2023年12月7日(木)、Youtubeにて2023年度第8回(全体では第16回)放送を
実施しました。本番組のメインパーソナリティーである「のじにぃ」(野尻英一先
生)と「ともちゃん」の二人に加えて、ゲストとして、リタイア後に積読状態だった
本をじっくり読まれている「いっこう」さんにご出演いただきました。
 数十年間にわたってコツコツと読書ノートをまとめられているというお話が印象的
でした。一般の方々から研究者まで、哲学書を読むすべての読書家にとって、見習う
べき姿勢を示していただけたように思います。
 以下は、出演者のみなさまからいただいたご感想です。


【2023年12月ゲスト・いっこう】
事前に哲学の学び・読書生活に関し大学・社会人時代についてターニングポイントを
整理しました。当日は的確な質問と示唆的なコメントによって自分の経験・思いを率
直に話すことができました。これまでの学び・読書生活の棚卸ができ貴重な機会でし
た。感謝です。


【のじにぃ】数十年にわたって記録し続けた読書ノート。ごく簡単なものでも痕跡を
残すことが大事とのお話でした。これはあらゆることに通じるかも知れません。一日
一字を記さば一年にして三百六十字を得、という吉田松陰の言葉がありますが、本当
に実行した人を見た思いがしました。感動です。
報告:眞田航(哲学と質的研究)

人類学基礎勉強会 12月活動報告

文責:松木貴弥(共生学系・共生の人間学)

活動日:12月6日、13日

 引き続き、クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』(1962)の読書会を行いました。第一章「具体の科学」の終盤部においてレヴィ=ストロースが分類している美術(「西洋の造形美術」・「いわゆる未開美術ないし原始美術」・「応用美術(工芸)」)やその創作の過程について、具体例を用いつつ参加者間で議論し、内容の理解を深めました。
 20日は都合により活動を行わなかったため、「具体の科学」が数ページ残っています。1月は、「具体の科学」を読み終えたのち、人類学の基礎知識を学ぶテクストを読み進めつつ、哲学の文脈において人類学がどのように受容されてきたのかについても検討していきます。

「ラカンと現代社会」研究会 12月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:12月6、13、20日
12月の研究会では、ラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅵ講を読み始めました。ラカンは主体を分裂したものとして考えていますが、主体が分裂するとは具体的にどのようなことなのかを巡って、参加者間で議論しました。今月で第1節が読み終わったので、来月からは第2節に入ります。
また研究発表を2件おこないました。1つ目は日本におけるボーイズラブ作品の読者による受容状況を、精神分析批評理論を用いて分析するものでした。2つ目は日本の「おたく」文化論における精神分析理論の受容を検討するものでした。いずれも精神分析と文化研究を結びつけるような発表でした。
1月も引き続き『精神分析の四基本概念』を読み進めます。