大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
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「ラカンと現代社会」研究会 7月活動報告

活動日:7月7、21、29日
7月の研究会では、ブルース・フィンクの著書『「エクリ」を読む』の第5章と第6章を読みました。第6章では『エクリ』の解釈からセミネール『アンコール』の解釈への主題が移り、後期ラカンの重要なテーマである「享楽」についての議論がなされました。
フィンクの議論の重要性を理解しつつも、最終的にはわれわれ「ラカンと現代社会」研究会なりのラカン解釈をもつことを目指すという結論に至ることができたのではないかと思います。
8月からはいよいよラカン本人の著作(セミネール)の読書会に移ります。

パネルディスカッション「竹内好のアジア主義と現代―転移関係を超えて―」を開催しました。

7月23日に「哲学の実験オープンラボ」公式イベントとして、早稲田大学SGUグローバルアジア研究拠点との共催として、竹内好のアジア主義についてのパネルディスカッションを行いました。20世紀帝国主義戦争の遺産である国民国家相互の歴史解釈をめぐる和解の問題はいまだ日本とアジア諸国とのあいだに横たわります。また一方でハイパーグローバリゼーションの時代となり経済や文化の交流がもたらす欲望や幻想の交換が国境を超えていっそう人々をつなぎ始めています。こうした中、日本社会は、変化の兆しはあるものの、いまだ1945年以降に形成された国民国家の閉域に想像力を閉じ込め、アジアに向かって開いていないように見えます。竹内好は戦後1940・50年代に早くもアジア主義を唱え、この想像力の閉域への「抵抗」を試みました。重要なのは、竹内が述べていたように、問題意識を「のせて動かしている場」についての理解です。いま日本人の想像力は、精神分析の用語を使うならば、どのような転移関係から/へシフトしようとしているのでしょうか。本パネルディスカッションでは、竹内好の問題意識を切り口に、現代日本人の想像力の可能性を問いました。
コーネル大学・酒井直樹名誉特別教授をお招きし、ヴィレン・ムーティ教授(東アジア思想史・ウィスコンシン大学)、梅森直之教授(日本政治思想史・早稲田大学)、野尻英一教授(比較文明学・大阪大学)のメンバーで、現代的観点から竹内好の「方法としてのアジア」の有効性について、議論が行われました。ハイブリッド方式で行われ、参加者申し込みは102名と盛況で、フロアからも活発な質問が出ました。

公開セッション「竹内好の〈アジア主義〉を再考する:アジアにおける未来共創に向けて」を開催しました。

7月19日(火)にViren Murthy教授(ウィスコンシン大学)にご参加いただき、アジアにおける未来共創を主題とした公開セッションを行いました。Murthy教授は外国人研究者招へいプログラム(短期)で人間科学研究科に滞在中です。G30科目「Contemporary Japanese Thought」とのジョイント企画として行いました。竹内好は戦前から戦後にかけて活躍したアジア主義を唱えた思想家、大阪大学の前身の一つである大阪高等学校出身です。ムーティ教授から「Pan-Asianism and the Legacy of the Chinese Revolution」題したプレゼンテーションがあり、学部生、大学院生とともに日本とアジアの関係について議論が活発にかわされました。

Radio PiXOL 第2回放送


7月21日(木)21:00-22:00
視聴者?名
YouTubeチャンネル登録者数25名
大阪大学未来共創センター「哲学の実験オープンラボ」は、実験的ネットラジオ放送局 Radio PiXOL(レィディオ・ピクソル)を開設しました。番組「テツガクシャの御用聞き」としてスタート。2022年度は<テツガクと私>編。

7月は阪大人科の比較文明学研究室で、「オタクの萌え」について研究をしている「やってぃん」さんをゲストにお呼びしました。たいへん面白いお話をいただきました。

【7月ゲスト・やってぃん・感想】今回初めての経験でドキドキしましたが、放送ではのじにぃとともちゃんのおかげで研究の原点を振り返ることができ、充実した時間を過ごせました。今後また良いご報告ができるように研究を頑張りたいと思いました。

【7月・のじにぃ・感想】精神分析の実践に携わってきたやってぃんの人生、BLとのかかわり、興味深いことばかりでした。人は誰でも自分なりの「窓」を通して世界を見ていますが、そのことに気づきません。「窓」が見えるようになることは、哲学や精神分析の効果の一つだとあらためて思いました。

「第二回バリアフル座談会」を開催しました!

2022年7月3日(日)、人間科学部有志学生団体minoriaによる企画「第二回バリアフル座談会」を大阪大学豊中キャンパスの大学会館にて実施しました。

「エンターテインメントって音ありき?」というテーマについて、ゲストとして招いたろう者の方と参加者とで話し合ってもらいました。主とするコミュニケーション方法の違いを超えてさまざまな意見が交わされ、前回に引き続き、関わった全員にとって実りある座談会となりました!
ご協力、ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

今後も、minoriaらしく、企画を実施しつつマイノリティについて考えを深めていきたいと思います。

「ラカンと現代社会」研究会報告 6月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:6月2、9、16、23、30日

6月の研究会では、ブルース・フィンクの著書『「エクリ」を読む』の第2章から第4章を読みました。特に第4章では有名な「欲望のグラフ」が扱われており、それまでの章の議論の総まとめのような内容になっていました。
スラヴォイ・ジジェクに関心があるメンバーも多いため、ジジェクによる「欲望のグラフ」の解釈と比較検討しながら、フィンクの解釈を議論できたと思います。
7月も引き続き『「エクリ」を読む』を読みます。『「エクリ」を読む』の読書会は7月で終わる予定です。

第6回「ラカンと現代社会」研究会報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)

6月16日(木)
参加者4人
今回の研究会では、ブルース・フィンクの著書『「エクリ」を読む』の第3章後半部を読みました。ラカンにおける「隠喩」と「父」の関係を中心に議論しました。
次回も引き続き、『「エクリ」を読む』の第4章前半部を読み進めます。次回は6月23日15時10分から、対面とオンラインのハイブリッドで行います。
なお、当研究会は8月中も活動を行います。課題文献はいよいよラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』です。 

第5回「ラカンと現代社会」研究会報告

第5回「ラカンと現代社会」研究会報告
文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
6月9日(木)
参加者3人
今回の研究会では、ブルース・フィンクの著書『「エクリ」を読む』の第3章前半部を読みました。ラカンにおける「文字」の概念を巡って、フィンク独自の解釈が展開されます。「シニフィアン」概念との関係を考えながら議論しました。
次回も引き続き、『「エクリ」を読む』の第3章後半部を読み進めます。次回は6月16日15時10分から、対面とオンラインのハイブリッドで行います。

第4回「ラカンと現代社会」研究会報告

第4回「ラカンと現代社会」研究会報告
文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
6月2日(木)
参加者3人
今回の研究会では、ブルース・フィンクの著書『「エクリ」を読む』の第2章後半部を読みました。エルンスト・クリスを批判するラカン、更にはラカンを批判するフィンク…という複雑な構造になっており、参加者で悩みながら議論しました。
次回も引き続き、『「エクリ」を読む』の第3章前半部を読み進めます。次回は6月9日15時10分から、対面とオンラインのハイブリッドで行います。

Radio PiXOL 第1回放送

6月9日(木)21:00-22:00
視聴者35名程度
YouTube登録者19名
大阪大学未来共創センター「哲学の実験オープンラボ」は、実験的ネットラジオ放送局 Radio PiXOL(レィディオ・ピクソル)を開設します。番組「テツガクシャの御用聞き」としてスタート。2022年度は<テツガクと私>編。
第1回目は、本放送の広報も担当してくれているチームメンバーの「ぴーちゃん」をお迎えし、のじにぃとともちゃんで「哲学とのかかわり」、「哲学にどんな興味を持っているか」、「哲学研究のやり方」などをテーマに対話を行った。

【6月ゲスト・ぴーちゃん・感想】
のじにぃさんとともちゃんさんのおかげで、とてもたのしくお話することができました。
哲学書を読むときのペースや意識づけなど、研究の裏話的な話ができたと思います。少しでも、哲学研究をすることについて、具体的なイメージをもってもらえていればうれしいです。

【6月・のじにぃの感想】
哲学対話の手法は、ふだんの転移関係を少しずらす(良い意味での)効果があるかも。相手も自分も知らなかった話が出てくる。哲学書は人間の生み出してしまった〈自然〉のようなところがある、と私が言ったこと、ぴーちゃんとの対話で初めて出てきました。ありがとう。