大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
Twitter

第17回ジジェク研究会

日時:2024年11月17日(土) 13:30〜17:15
場所:zoomミーティング
参加人数:14名
プログラム
1.データベース・ミーティング:Less Than Nothing, Chapter8, Lacanian Prosopopoeia節,¶8-10(pp.513-515)
2.ジジェク研究会:池松辰男「〈世界の闇夜〉とヘーゲル的主体性—ジジェクにおける主体と実践の思想」

概要報告
前半のデータベース・ミーティングでは、当該箇所でジジェクが述べる「アイロニー」のヘーゲル弁証法における核心であること妥当性や一般的な「小文字の他者」理解からすると奇妙に思われる「小文字の他者」としての分析家という位置づけのラカンにおける典拠について議論がされた。
後半のIJZSに向けての研究発表では、池松辰男氏(島根大学)による発表がなされた。
ジジェクが初期のヘーゲルにある「世界の闇夜」という概念を実践理論の核心に据えていることを、Less Than Nothingとヘーゲルに即して論じる発表であった。人間主体は一方で世界に先行する世界の形式であり、他方で客観として世界の一部であるというある種矛盾した在り方で、それを可能にするプロセスとしての否定的なもの(世界の闇夜)とその補完としての習慣という、狂気と習慣の両輪性が論じられた。

文責:丸山由晴(比較文明学)

第16回ジジェク研究会

日時:2024年10月19日(土) 13:30〜17:30
場所:zoomミーティング
参加人数:17名
プログラム
1.ジジェク研究会a:飯泉佑介「今日、ヘーゲル主義者であることはいかにして可能か――ヘーゲルを歴史的に反復するジジェク」
2.ジジェク研究会b:吉松覚「アンドレ・グリーンとジジェクの接近するポイントに向けて」

    概要報告
    今月は飯泉佑介氏(福岡大学)と吉松覚氏(帝京大学)2名の発表がなされた。
    飯泉氏は、ジジェクがLess Than Nothingで展開する(ヘーゲル以後になす)「ヘーゲルの歴史的反復」について、同書以前での「反復」論を踏まえつつ論じた。ジジェクはヘーゲル的反復では捉えられないものとしての「純粋反復」をラカンが捉えているとするものの、絶対的否定性が純粋反復であるなら、ある種の位置づけがヘーゲルにおいてすでになされている可能性に言及するなど飯泉氏独自の見解まで示された。
    吉松氏は、ラカンの下で修業したエジプト出身の精神分析家アンドレ・グリーンの『否定的なものの労苦』を介して、ヘーゲルと精神分析、ジジェクの関係について論じた。グリーンは同書の「ヘーゲルとフロイト」章で両者の比較を行い、交差を認めるものの、後年にはヘーゲルから離れていく。現代のラカン派ジジェクにまでつながり得る、「否定」をめぐるヘーゲルと精神分析の距離がある種の軸となるものであった。

    議論や実施内容の詳細は添付資料を参照のこと。

    文責:丸山由晴(比較文明学)

    第15回ジジェク研究会

    日時:2024年9月16日(土) 13:30〜17:30
    場所:zoomミーティング
    参加人数:9名
    プログラム
    データベース・ミーティング:Less Than Nothing, Chap.4: Is It Still Possible to Be a Hegelian Today?よりStruggle and Reconciliation節(¶12-17/pp.199-)

    概要報告
    今月のデータベース・ミーティングでは、上記箇所にてジジェクの記述の典拠や対立の「和解」についてのジジェクの立場が初期とLess Than Nothingで変化したのかなどが議論された。

    議論や実施内容の詳細は添付資料を参照のこと。

    文責:丸山由晴(比較文明学)

    第14回ジジェク研究会

    日時:2024年8月16日(金) 13:30〜17:15
    場所:zoomミーティング
    参加人数:17名
    プログラム
    1.データベース・ミーティング:Less Than Nothing, Chap.8: Lacan as a Reader of Hegelより冒頭およびThe Cunning of Reason節(¶1-4/pp.507-511)
    2.ジジェク研究会:原和之「ラカンの想定論理、あるいは何においてジジェクのラカン主義を認めるか」

      概要報告
      データベース・ミーティングでは先月と同じ範囲を改めて取り組んだ。主なコメントについては添付資料を参照のこと。
      IJZSに向けての研究発表では、原和之氏(東京大学)から発表がなされた。
      ジジェクはラカン主義の立場からヘーゲルを読解していると言われる。その際にジジェクが依拠するのがドイツのヘーゲル研究者ディーター・ヘンリッヒ、そしてヘンリッヒが強調するヘーゲルの「反省論理」である。原氏は『もっとも崇高なヒステリー者』、『イデオロギーの崇高な対象』の初期ジジェクを軸に据え、ジジェクが依拠する「反省論理」と1950年代ラカンにみられる「想像的ファルスの全体」を想定する「想定論理」との照応を探り、その点にラカン主義者としてのジジェクを見定める。ジジェクを介しつつ、原氏なりにヘーゲルとラカン、哲学と精神分析の照応を図る発表であった。

      議論や実施内容の詳細は添付資料を参照のこと。

      文責:丸山由晴(比較文明学)

      第13回ジジェク研究会

      日時:2024年7月20日(土) 13:30〜17:30
      場所:zoomミーティング
      参加人数:18名

      プログラム
      1.データベース・ミーティング:Less Than Nothing, Chap.8: Lacan as a Reader of Hegelより冒頭およびThe Cunning of Reason節(¶1-3/pp.507-511)
      2.ジジェク研究会a:高橋一行「less than nothingの概念をヘーゲル論理学に探る」
      3.ジジェク研究会b:信友建志「ラカンの「資本主義のディスクール」再構成の試み」

      概要報告
      IJZSに向けての研究発表では、高橋一行氏(明治大学名誉教授)、信友建志氏(鹿児島大学)による発表がなされた。
      高橋氏からは、ヘーゲル「論理学」の冒頭の議論から、ジジェクが提示する「無以下の無」概念をヘーゲル「論理学」にも探る議論が、ヘーゲル研究史における「無」の取り扱いを参照しながら展開された。
      信友氏からは、ラカンの「資本主義のディスクール」概念について、その発生経緯と研究史をめぐる発表がなされた。

      議論や実施内容の詳細は添付資料を参照のこと。

      文責:丸山由晴(比較文明学)

      マイクロアグレッション関連文献読書会 2024年10月活動報告

      文責|客本敦成(比較文明学研究室)
      活動日|10月21日
      参加者|5名

       10月の活動では、赤木優希氏による研究発表をおこなった。赤木氏の発表はジャン・ポール・サルトルの「憎悪」概念に注目し、マイクロアグレッションにおける非意識的な敵意を分析するものであった。
       マイクロアグレッション研究において、マイクロアグレッションの「加害者」(この表現の妥当性もしばしば議論になる)が害意や敵意を有しているかどうか、有しているとしてどのように有しているかどうかは、難しい問題として議論されてきた。
       赤木氏はこれに対して、人間関係を複数の自己意識間の「眼差し」の問題として分析し、マイクロアグレッションを発生させる敵意を、サルトルが唱える意味での「憎悪」として位置づけた。
       議論のなかでは、マイクロアグレッションにおいてよくみられる、眼差しを向ける者と向けられる者の間での非対称性をどのように理解すればよいのかについての議論がなされた。またこれと関連して、眼差す者の透明化にかんする、フランツ・ファノンの理論の紹介もなされた。
       11月の活動では、土屋友衣子氏の研究発表をおこなう予定である。