大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
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「ラカンと現代社会」研究会 7月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)

活動日|7月4、18、25日
参加人数|いずれも6名

7月の研究会では、ラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅶ講を読みました。ラカンがホルバインの『大使たち』とダリの作品の親近性について論じているところから、神経症における「眼差し」の経験と精神病(パラノイア)における「眼差し」について議論したほか、質疑応答でのやり取りからサルトルとラカンの「他者」概念の違いを改めて確認しました。
これで漸く第Ⅶ講が終わります。8月は活動せず、9月から第Ⅷ講に入ります。岩波文庫版の上巻だと、残り2講となりました。焦らずゆっくり議論しながら読み進めたいと思います。

第12回ジジェク研究会

日時:2024年6月15日(土) 13:30〜17:50
場所:zoomミーティング
参加人数:17名

プログラム
データベース・ミーティング:Less Than Nothing, Chap.4: Is It Still Possible to Be a Hegelian Today? よりHegel versus Nietzsche 節(pp.195-196/¶7-11)
発表(小川歩人(大阪大学)):「不可能なものとは別の仕方でとは別の仕方で… 」——日本におけるデリダ、ラカン、ジジェク受容」

概要報告
データベース・ミーティング
データベース・ミーティングにおいては、今回も引き続きLess Than Nothing, Chap.4: Is It Still Possible to Be a Hegelian Today? のHegel versus Nietzsche 節が扱われた。
ヘーゲル以後の論者が無視していたものこそ重要なのだ、という論(前回の範囲)を背景に、フランスの哲学者Gérard Lebrunによる「ニーチェ」的なヘーゲル読解(L’envers de la dialectique)を補助線として議論が展開される。否定性の捉え方で、いわゆるヘーゲル的な見方とニーチェ的な見方が対比される。すなわちヘーゲルにおいては否定性という過剰なるものは結局、総体性、肯定的な全体の契機に回収されてしまうのに対して、ニーチェからすればそこには否定性それ自体に対する肯定的な眼差しが欠けている。とはいえこれは「いわゆる」見方であり、次節”STRUGGLE AND RECONCILIATION”で展開されるジジェク自身の論を検討していきたい。
各所への具体的なコメントについては本ページに添付の資料を確認のこと。
来月はLess Than Nothingより、Chapter 8: Lacan as a Reader of Hegelを扱う。

研究発表(ジジェク研究会)
後半の研究発表では、フランスの哲学者ジャック・デリダを専門とする大阪大学特任講師の小川歩人氏によって、一般に対立するとみなされるデリダとフランスの精神分析家ジャック・ラカン、そしてその受容者たち(ジジェクと日本の批評家・哲学者東浩紀)とにある種の共通点がある旨、複雑な関係をほぐしながら整理する発表がなされた。
デリダは一般に、ラカンの精神分析理論を批判していると理解されている。しかし小川氏は、批判ののちにデリダが示す論理(「郵便空間の論理」)がむしろ、ラカン自身が後期に提唱する〈性別化の式〉における「女性の式」と重なるところがあるとする。この重なりと隔たりに関して、日本での事情としては、日本におけるジジェク受容とデリダ派(日本の批評家・哲学者東浩紀)との関係もまた絡むこととなる。すなわち東はラカン派のジジェクを批判するが、むしろ両者にある種の共通性があると小川氏は指摘する。このような複雑かつ相互的な関係を整理する発表であった。
以上
文責:丸山由晴(比較文明学・M3)

マイクロアグレッション関連文献読書会 6月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日|6月17日
参加人数|いずれも5名

 今回の研究会では、2件の研究発表を行いました。まず客本敦成(大阪大学大学院、本報告執筆者)が、現在のマイクロアグレッション研究を巡る哲学的研究の現状と今後の方向性を議論しました。具体的には、Jeanine Weekes Schroerの論文”Giving Them Something They can Feel: On the Strategy of Scientizing the Phenomenology of Race and Racism”における、マイクロアグレッションの被害者の「証言」についての問題提起を紹介したうえで、ジュディス・バトラーの「反覆」という概念を導入し、「証言」を言説の運動のなかで位置づけることの必要性を主張しました。
 次に奥村晴奈(大阪大学大学院)が、マイクロアグレッション研究とアーヴィング・ゴフマンのスティグマ論を比較検討しました。ゴフマンの「可視的なスティグマ」「不可視的なスティグマ」という区別を導入することによってマイクロアグレッション現象のより精緻な分析がなされることが期待される一方で、ゴフマンのスティグマ論における「相互行為」という前提がマイクロアグレッション現象の前提と完全に重なるわけではなく、今後も見当が必要であることが主張されました。
 次回も引き続き研究発表を行う予定です。

マイクロアグレッション関連文献読書会 4月・5月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日|4月30日、5月13日
参加人数|いずれも5名

4月及び5月の活動では、現在計画している、参加者間合同での研究発表(※)に向けて、意見交換をおこないました。
まず4月には、発表を希望している各メンバーが、自分の研究関心からどのようにマイクロアグレッションという現象を議論するかということを簡単に報告し、今後の研究の方向性や互いの関心の異同を確認しました。それぞれの関心は異なるところも多いのですが、「理論研究と事例研究をベースに、従来のマイクロアグレッション研究とは異なるかたちでマイクロアグレッションについての考察を展開・応用するためのアイデアを提示する」という全体の方向性を共有することができました。
次に5月には、全体の方向性を改めて確認したうえで、研究発表のタイトルや紹介文の作成を行いました。全員の関心を統一したうえで短い文章に落とし込まなければならないため、お互いに議論は行ったものの、まだ十分に合意することはできていません。今後も議論を行いながら、研究会活動を進めたいと思います。

「ラカンと現代社会」研究会 5月・6月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日|5月2、9、16、23、30日 6月6、20日
参加人数|いずれも7名

5・6月の研究会では、ラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅶ講を読みました。ラカンの有名な「眼差し」についての議論が扱われている箇所ですが、ラカンが哲学や数学、絵画史などさまざまな分野を横断して議論を展開しており、難解でした。そのなかでも、「精神分析の基礎概念を考察する」という議論全体の方向性を改めて全体で確認することで、理解を深めました。
7月以降も、第Ⅶ講を読み進めます。ご関心ある方は、お気軽にご連絡ください。