大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
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マルクス主義的社会理論研究会 7月活動報告

丸山由晴(社会学系・比較文明学M2)

活動日:7/4, 7/11, 7/18, 7/25

先月から引き付き、マルクス『資本論』第一巻に取り組み、第9章「剰余価値率と剰余価値量」から第12章「分業とマニュファクチュア」の第3節まで読みました。

主として、生産力の向上によって生じる「相対的剰余価値」とそのための生産力の向上についての記述をみてきました。
マルクスの議論をテキストに即して確認しながら、現代においてマルクスの理論をどのように扱うかも頻繫に議論がなされました。参加者の一人から次のような指摘がありました。マルクスは資本が利潤を得る方向として無駄(空費など)の削減を志向しているものの、現代においてはかえって資本主義は無駄とされるもの——例えばラグジュアリーな商品のように——をも含んで、価値増殖、経済事象としてその運動が成立しているのではないか、と。
無駄が有用性に裏返るという論理は報告者にとって興味深い点であり、もちろんすぐにそのすべてを評価できるものではありませんが、来月以降には、参加者の関心に応じた研究発表も本会で行えたらと考えております。

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2023年7月活動報告

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2023年7月活動報告

 2023年7月20日(木)、Youtubeにて2023年度第3回(全体では第11回)放送を実施しました。本番組のメインパーソナリティーである「のじにぃ」(野尻英一先生)と「ともちゃん」の二人に加えて、ゲストとして「スーちゃん」さんにご出演いただきました。スーちゃんさんは、在野で哲学を勉強されている元小学校教員のかたです。
 放送では主に、社会人になってから哲学を勉強されるようになった経緯について語っていただきました。哲学を勉強するなかで、たくさんの仲間ができたというお話が印象的でした。
 以下は、スーちゃんさんとのじにぃからいただいたご感想です。

【7月ゲスト・スーちゃん】
自分のこれまでを振り返るいい機会となりました。新採で入った小学校で大先輩の婦人教師から言われた“30になったら自分の専門を一つ決めなさい”を、思想の場でですが、アーレントを読み続けていくんだと、69才になってやっと、この30の場に立てたのかなと思います。

【のじにぃ】
哲学を学ぶ社会人の人たちにご登場いただく第一回目、教育職に携わるスーちゃんにご出演いただいて、哲学との最初の出会い、教師や仲間との出会いを通した出会い直し、哲学を続けていくことの楽しさを、盛りだくさんお話しいただきました。楽しかったです。ありがとうございました!

 次回は、8月10日(木)21:00-22:00に配信します。ぜひご視聴ください。

報告:眞田航(哲学と質的研究)

「ラカンと現代社会」研究会 7月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:7月13日
7月は日程がうまく調整できず、また、参加者の体調不良などもあり、1回しか活動することができませんでした。
13日の回では、引き続きラカンのセミネール『精神分析の四基本概念』の第Ⅴ講を読みました。レジュメ担当者が内容をうまく理解することができず、議論が若干難航したのですが、他の参加者との議論を経て、最終的には理解を深めることができました。

マイクロアグレッション関連文献読書会 6月活動報告

文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:6月27日
マイクロアグレッション関連文献読書会の最初の活動として、デラルド・ウィン・スーの著作『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』の第7章の読書会をおこないました。
スーはレイシズム研究と比較しながらマイクロアグレッション研究の可能性を検討していますが、スーが述べるように両者が関わるのか、あるいは、マイクロアグレッション概念を用いることでレイシズム研究のどのような点を補うことができるのかなど、マイクロアグレッション概念の意義を踏まえつつ、更に深く議論することができました。
7月も引き続き『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』を読み進めます。

マルクス主義的社会理論研究会 6月活動報告

丸山由晴(社会学系・比較文明学M2)

活動日:6/6, 13, 20, 27

先月から引き続き、『資本論』第1巻を読んでいます。
今月の活動で、第8章「労働日」を読み終えました。

全体として、19世紀イギリスの労働環境や、環境改善のための労働闘争についてのジャーナリスティックな記述が多く、それを『資本論』という理論的な本に載せたことの意味がよく議論されました。
報告者としては、一つにはマルクスが実践的次元へのまなざしを強く持っていたことを示す証左であると考えました。加えて、マルクスが『資本論』を読み始めるにあたって、「労働日」章をすすめていたことを踏まえて、いわば労働者に対するアジテーションの意味があったのではないか、そして翻って『資本論』全体が理論書であると同時に、活動のためという面も有するのではないかとも議論されました(ただしその割にはあまりに理論的な話が多いというバランスの問題はありますが)。
また、個々の記述は別としても、マルクスは、労働時間の短縮が、より良い社会を実現するための先決的条件であると(引用ではありますが)語っており、実際労働時間の制定を巡った闘争の歴史を記述しているところからも、『資本論』のようなマルクスの系譜は、革命を起こしたがるようなところはありつつも、漸進的に改善するビジョンもあったのだと興味深く思いました。

来月も『資本論』を読み進めていきます。

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2023年6月活動報告

対話番組「Radio PiXOL テツガクシャの御用聞き」2023年6月活動報告

2023年6月22日(木)、Youtubeにて2023年度第2回(全体では第10回)放送を実施しました。本番組のメインパーソナリティーである「のじにぃ」(野尻英一先生)と「ともちゃん」の二人に加えて、ゲストとして「めとろ」さんにご出演いただきました。めとろさんは、図書館でお仕事をされながら、フランス現代思想を社会思想的観点からご研究されています。
放送では主に、働きながら研究することのむずかしさ、研究者のセルフケアの必要性などについて語っていただきました。日常的なトピックに関連させながら、非常にわかりやすくお話ししていだきました。内容としても、研究をつづけていくなかで多くの方が感じる困難をうまく言語化していただいたように感じています。
次回は、7月20日(木)21:00-22:00に配信します。ぜひご視聴ください。

報告:眞田航(哲学と質的研究)