大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
Twitter

美的近代研究プロジェクト 第四回読書会報告

2022年3月23日に実施された、哲学の実験オープンラボの公認プロジェクトの読書会です。以下は参加された学生の報告です。

文責:安藤歴(共生学系・共生の人間学)

3月23日(水)
参加者10人 今回の研究会では、ジャン=リュック・ナンシー/フィリップ・ラクー=ラバルトの著書『ナチ神話』を読みました。今回は邦訳41ページまでを主に議論しました。主に1970、80年代の時代状況と全体主義論について議論されたほか、アーレントの全体主義論や哲学と政治の関係についての議論、ハイデガーとの関係などについても話が広がりました。
今回は前半部を主に検討して、本書の核となる議論は次に持ち越しました。次回は4月22日19時半(予定)からオンライン上にて行います。扱う文献は、ジャン=リュック・ナンシー/ラクー=ラバルト『ナチ神話』(42頁以降)です。

精神分析と哲学の悩ましい関係パネルディスカッション

3月13日(日)「精神分析と哲学の悩ましい関係」パネルディスカッションが開催されました。東京精神分析サークル/哲学の実験オープンラボ(大阪大学未来共創センター)/早稲田大学大学院文学研究科表象・メディア論コースの共同主催でした。申込者数146名、当日参加者125名と盛況でした。
司会は高橋一行(明治大学)、パネリストは片岡一竹(早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程)「『饗宴』における三人のソクラテス――ラカンの反哲学の一例として」(当日に発表タイトル変更)、野尻英一(大阪大学大学院人間科学研究科准教授)「哲学はいかに精神分析を必要とするか」、辰己一輝(大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程)「隠喩としての自閉症────構想力の〈盗用〉をめぐる試論」、指定コメンテーターは原和之(東京大学大学院・総合文化研究科教授)、向井雅明(精神分析相談室)でした。
哲学、精神分析、思想史、障害学、当事者研究、和解学と分野を越境した学術活動に関わるアクティヴな論客が集い、哲学と精神分析の現代における実践のあり方をめぐりながら理論、思想史の問題も論じる水準の高い議論がかわされました。フロアからも活発な質問や意見が出て、予定時間を越え五時間以上にわたる有意義な内容のパネルディスカッションとなりました。

町工場 BOOT CAMPフォーラム デザイン経営を実践する ものづくり企業社長とディスカッション

3月5日(土)「町工場 BOOT CAMPフォーラム デザイン経営を実践する ものづくり企業社長とディスカッション」が開催されました。告知が直前となってしまった事情もあり、学生の参加者は10名ほどと少数でしたが、起業を目指す学生とものづくり企業の社長たちと活発な議論が行われました。海外からの留学生が大きな関心を持って参加していたことが印象的でした。大学教員と社長たちのあいだでも熱の入ったやり取りがあり、産学連携のつながりが広がる機会となりました。野尻は個人的に、日本の中小企業再編論に関心を持っており、今後、KSAC(京阪神スタートアップ アカデミア・コアリション)や大阪ケイオスの活動をフォローするつもりです。

美的近代研究プロジェクト 第三回読書会報告

2022年2月15日に実施された、哲学の実験オープンラボの公認プロジェクトの読書会です。以下は参加された学生の報告です。

文責:安藤歴(共生学系・共生の人間学)

2月15日(火)
参加者16人
今回の研究会では、神戸大学准教授の石田圭子さんをお呼びして、「ファシズムと崇
高」というタイトルでお話しいただいた。石田さんは『美学から政治へ モダニズムの詩―
人とファシズム』(慶應義塾大学出版会、2013年)など、近代における政治と芸術の関
係を研究しており、またボリス・グロイス『アート・パワー』(現代企画室、2017年)
の翻訳をはじめ現代の芸術政治に関しても造詣が深いことから、本研究会での講演を依頼
した。特に石田さんが現在実施している「ファシズムにおける『崇高』の美学と政治の関
係をめぐる批判的考察」という科研費プロジェクトの成果の一部について講演いただいた。
講演の内容は特に崇高の美学とファシズムの関係についてのものだった。いわゆる「政
治の美学化」が「美」であるのか、「崇高」であるのかという点から、現代における崇高
のあり方の変化などが取り上げられ、崇高はファシズムに対する抵抗となりうるとともに、
逆にファシズムの神話に転化されうるという両義性があるものだという議論がされた。石
田さんは多くの重要な論点や議論を提起しており、質疑応答も盛んになされるなど、研究
会の議論への刺激となった。
次回は3月23日19時(予定)からオンライン上にて行います。扱う文献は、ジャン=
リュック・ナンシー/ラクー・ラバルト『ナチ神話』です。今回の講演の内容をもとに、議
論を発展させていくつもりです。