大阪大学
大阪大学大学院人間科学研究科 附属 未来共創センター
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美的近代研究プロジェクト第14回読書会報告

文責:安藤歴(共生学系・共生の人間学)
3月16日(木)19:00~
参加者11人

今回の研究会では、東京大学の竹峰義和教授をお呼びして、「ジークフリート・クラカウアーの美学と政治をめぐって」という講演をしていただきました。竹峰教授は昨年末にクラカウアー『映画の理論―物理的現実の救済』(東京大学出版・2022年)を翻訳・出版されていますが、今回はこの著作を含めてクラカウアーの著作をまたいでお話しいただきました。講演では、クラカウアーの特徴が主題やジャンルの越境性やモダニズムを高級芸術に限定せず、近代の感覚や経験の新しい組織化として大衆の感覚経験の変容を跡付ける見方として特徴づけられ、「ヴァナキュラー・モダニズム」や「点状化・アトム化」、「大衆の装飾」などをキーワードとなりました。
加えて、イズムに典型であるような理念に対する懐疑から、クラカウアーが推奨した「待つ」という姿勢にも重要な論点として提起されました。『映画の理論』については、クラカウアーが構成主義に対してリアリズムを評価していたこと、映画を写真の延長だと見なし、「物理的現実を記録し開示する」という映画観なども、今としてはむしろ興味深い議論でした。
質疑応答も盛り上がり、実り多い研究会となりました。

次回は、4月21日19:00から、アレクサンダー・クルーゲとオスカー・ネークト(原書Öffentlichkeit und Erfahrung – Zur Organisationsanalyse von bürgerlicher und proletarischer Öffentlichkeit (1972).英訳:Public Sphere and Experience: Analysis of the Bourgeois and Proletarian Public)の一部抜粋を読みます。