データベース・ミーティング:Less Than Nothing, Chap.4: Is It Still Possible to Be a Hegelian Today? ¶19-21【担当者|三重野】
ジジェク研究会:高橋一行 “Does the Concept of “Less Than Nothing” of S. Žižek Come from Hegel’s Logic ?”【発表者|高橋一行(論文第一稿発表)】概要報告
4月の研究会では、Less Than Nothingを題材としたデータベース・ミーティングとInternational Journal of Žižek Studies誌論文投稿にむけての研究発表がなされた。
データベース・ミーティングでは、三重野清顕氏(東洋大学)の司会のもと、Less Than Nothingの第4章を読み進めた。論点としては主に、次の二点が検討された。 まず、ジジェクが繰り返し引用しているフランスのヘーゲル研究者、ジェラール・ルブランのヘーゲル解釈を検討し、ヘーゲル・ルブラン・ジジェクの三者の関係を整理した。 次に、ジジェクがヘーゲル(主義)とマルクス(主義)の関係についてどのような見解を持っているかが議論された。ジジェクは一般的なヘーゲル主義(〈矛盾なる二つの立場を強制的にまとめあげて一つのものにする〉)を絶えず批判し、〈矛盾の解決が既に起こっていることに気づくこと〉をヘーゲルの立場として提示する。その一方で、批判対象である一般的なヘーゲル主義やマルクス主義は紋切り型という印象が否めず、ジジェクがどのような意味で・どの程度ヘーゲルやマルクスの立場に近いと言えるかは議論の余地があることが確認された。
研究発表では、高橋一行氏(明治大学)から、ヘーゲル論理学をジジェクの「無以下の無」(less than nothing)を援用しつつ検討する発表がなされた。高橋氏によれば、ヘーゲルの存在論においては存在と無に先立つ「無以下の無」と呼べるものが機能しているが、ジジェクのヘーゲル解釈はこれを強調するものとして理解できる。高橋氏はジジェクを参照しつつもヒッグス粒子の理論や西田幾多郎の絶対無の概念、および日本のヘーゲル研究の歴史などを参照しながら、「無以下の無」を基とするヘーゲルの存在論を再構成した。