マイクロアグレッション関連文献読書会 12月活動報告
文責:客本敦成(社会学系・比較文明学)
活動日:12月19日
今月は、これまで続けてきたデラルド・ウィン・スーの著作『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』の読書会の最終回として、参加者それぞれが用意したコメントをもとに、議論をおこないました。
特に議論で中心的な論点となったのは、「マイクロアグレッションをどの立場から語るか」という問題です。スーは臨床心理学者という立場のもと、主にクライエント(=被害者)の立場からマイクロアグレッションを論じていますが、それは十分なのか。特権をもつ者(=加害者)の立場からマイクロアグレッションを論じることや、あるいはスーとは違うかたちでマイクロアグレッションの被害者の立場から語ることも可能なのではないか、ということを議論しました。この問題は「立場」や「代理」という難しい問題を含んでおり、参加者間でも完全な結論に至ることはできませんでしたが、この研究会における問題の所在を参加者間で改めて共有するという観点から言えば、充実した議論ができたのではないかと思います。
図書の選定以前に想定していたことではないのですが、本読書会で来年以降に読み進めるロビン・ディアンジェロの『ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか?』(日本語訳は明石書店)は、偶然にも、まさにそのような特権の問題を扱った著作です。スーの著作やこれまでの議論の成果を踏まえつつ、更に問題の理解や議論を深めていければと思います。