岩田慶治:「京都学派およびポスト京都学派」という文脈において
文責:織田和明
活動日:2023年12月9日(オンライン開催)
イベント参加人数:17名
関西大学などで非常勤講師を務められている西垣有先生をお招きして「岩田慶治:「京都学派およびポスト京都学派」という文脈において」をオンラインで開催しました。大阪大学グローバル日本学教育研究拠点・拠点形成プロジェクト 「京都学派およびポスト京都学派における科学哲学および技術哲学研究」の主催、大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクト「哲学の実験オープンラボ」の共催です。人類学・哲学に関心のある人を中心に17名の方にご参加いただきました。
岩田慶治(1922-2013)は大阪市立大学、東京工業大学、国立民族学博物館、大谷大学で教授を務めた文化人類学者で、東南アジアでのフィールド調査、そして日本文化への独自の視点から分析を経て、〈自分学〉として成された新アニミズム論というユニークな理論を構築したことで知られています。西垣先生は2022年に京都大学学術出版会から出版された松本 博之・関根 康正編『岩田慶治を読む: 今こそ〈自分学〉への道を』の「第4章 今日の岩田慶治──柄と地をめぐって」を執筆されています。
この研究会では西垣先生に「岩田慶治:京都学派とポスト京都学派という文脈において」というタイトルでご発表いただき、「一と多」「直接無媒介と媒介」「〈同時〉と入れ子構造」「キラキラと構想力」をキーワードとした大変興味深い議論をお聞きし、そしてみなさんと岩田の思想についてディスカッションをすることができました。
西垣先生は、岩田の思想を、西田幾多郎や西谷啓治を中心とした京都学派や同時代に新京都学派の一人とも呼ばれた今西錦司、主に戦前に活躍したアメリカの文化人類学者のルース・ベネディクトや現代ブラジルの文化人類学者ヴィヴェイロス・デ・カストロの思想と対比しながら論じていきました。そして岩田の思想の特徴を、親鸞や道元といった日本の仏教思想を踏まえながら一と多が〈同時〉に、入れ子構造で直接無媒介に現れる「個物と全体がそこでキラキラとかがやいて互いに相侵すことがない」世界を描くものであると明らかにされました。
参加者の方からは「岩田のことは知らなかったけれど、京都学派・ポスト京都学派と関連付けながら学ぶことができて、広がりを感じました」や「近年リバイバルが進みつつある岩田の人類学を、京都学派および現代人類学との関連で整理したもので、たいへん勉強になった」といった感想をいただいています。西垣先生のご講演、そして参加者とのディスカッションを通じて岩田の思想の持つ大きな可能性が示されました。哲学と人類学の交流によって新たな思想を描き出す可能性が私たちの前には広がっています。
主催:大阪大学グローバル日本学教育研究拠点・拠点形成プロジェクト 「京都学派およびポスト京都学派における科学哲学および技術哲学研究」
共催:大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター IMPACTオープンプロジェクト 哲学の実験オープンラボ
講演:
西垣 有(関西大学非常勤講師)