美的近代研究プロジェクト 第三回読書会報告
2022年2月15日に実施された、哲学の実験オープンラボの公認プロジェクトの読書会です。以下は参加された学生の報告です。
文責:安藤歴(共生学系・共生の人間学)
2月15日(火)
参加者16人
今回の研究会では、神戸大学准教授の石田圭子さんをお呼びして、「ファシズムと崇
高」というタイトルでお話しいただいた。石田さんは『美学から政治へ モダニズムの詩―
人とファシズム』(慶應義塾大学出版会、2013年)など、近代における政治と芸術の関
係を研究しており、またボリス・グロイス『アート・パワー』(現代企画室、2017年)
の翻訳をはじめ現代の芸術政治に関しても造詣が深いことから、本研究会での講演を依頼
した。特に石田さんが現在実施している「ファシズムにおける『崇高』の美学と政治の関
係をめぐる批判的考察」という科研費プロジェクトの成果の一部について講演いただいた。
講演の内容は特に崇高の美学とファシズムの関係についてのものだった。いわゆる「政
治の美学化」が「美」であるのか、「崇高」であるのかという点から、現代における崇高
のあり方の変化などが取り上げられ、崇高はファシズムに対する抵抗となりうるとともに、
逆にファシズムの神話に転化されうるという両義性があるものだという議論がされた。石
田さんは多くの重要な論点や議論を提起しており、質疑応答も盛んになされるなど、研究
会の議論への刺激となった。
次回は3月23日19時(予定)からオンライン上にて行います。扱う文献は、ジャン=
リュック・ナンシー/ラクー・ラバルト『ナチ神話』です。今回の講演の内容をもとに、議
論を発展させていくつもりです。